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ブログ炭をつくることから、地域の未来を考える

農福連携の現場に届けた「無煙炭化器M150」

信濃毎日新聞主催のクラウドファンディングを通じて、モキ製作所は長野県内の福祉事業所へ「無煙炭化器M150」を寄贈しました。

今回の取り組みで私たちが大切にしたのは、ただ無煙炭化器をお渡しすることではありません。

農業と福祉が結びつく「農福連携」の現場では、農作物を育てる仕事だけでなく、剪定枝を拾ったり、薪を束ねたり、畑を整えたりと、地域の農業を支えるさまざまな仕事が生まれています。そして、そこでの活動からは「枝」や「端材」といった資源も生まれます。 

これまで処分されていたものを炭に変え、畑へ返す。または、新しい仕事として炭づくりに取り組む。無煙炭化器が、そんな「地域の循環」のきっかけになればと思います。

今回は、M150を受け取ってくださった事業所様を訪ね、実際の農業や福祉の現場でどのように活用されているのか、そして、これからどんなことができそうかを伺いました。

ユーカリを炭に変え、畑へ返す

カンタービレ

カンタービレでは、ユーカリの一種である「グニー」を育てています。ユーカリ畑は3カ所あり、その成長の早さも特徴です。4月に枝を切ると、1年後には人の背丈を超えるほどに成長することもあるそうです。 

育てたユーカリはJAへ販売していますが、規格に合わないものや傷んだ枝など、販売できないものも出てくるそうです。もともとはユーカリを使ったアロマづくりにも挑戦していましたが、商品化には至りませんでした。

そこで、販売できないユーカリや枝を別の形で活かせないかと考えたことが、無煙炭化器の活用につながったそうです。

無煙炭化器との出会いは、知人であるクロスオーバーの沖村さんからの紹介だったそうです。もともと福祉施設で働いていた経験もあり、以前から環境に配慮した取り組みをしたいと考えていました。

現在はユーカリのほか、ほうれん草、たまねぎ、トマト、ピーマンなどの野菜も育てています。自分たちで野菜を育て、販売し、農業から生まれたものを再び畑へ返していく。そんな循環をつくりたいという思いも、今回M150を受け取った理由の一つです。

2025年12月に無煙炭化器が納品され、取材を行った2026年3月の時点ですでに2回、炭づくりに取り組んでいました。 つくった炭は、自家栽培している野菜の畑に撒いているそうです。

一方で、実際に使う中で、ユーカリだけでは材料が足りないことや、冬場は水を確保しにくいこと、風の強い日は使えないことなど、現場ならではの課題も見えてきました。

これからは、周辺の農家から桃の剪定枝などを分けてもらい、炭の材料として活用することも考えているそうです。取材に伺った際、桃の木がとてもきれいだったのが印象に残っています。 

できた炭を自分たちの畑だけで使うのではなく、枝を提供してくれた農家にも分けていきたいとのこと。将来的には、畑に撒くための炭として販売することも、一つの可能性として考えているそうです。

「使えないもの」を「畑へ返せるもの」へ。カンタービレで始まった炭づくりが、農業と環境、そして地域をつなぐ循環へと広がっていく可能性を感じました。

農業そのものが「働くこと」になる

信州ふれあいの森 就労施設

信州ふれあいの森 就労施設では、年間を通して主にトマトを栽培しています。夏にはきゅうりも育てており、約100メートル×6.5メートルのハウスを活用しています。施設には30人の就労者が在籍し、農業に関わるさまざまな仕事を担っています。

果樹栽培は現在行っていませんが、以前はきのこの栽培にも取り組んでいたそうです。また、おがくずを堆肥化するなど、農業の現場で生まれる資源を活かす工夫も取り入れています。

一方で、木質資源の処理には課題もあります。農業では剪定枝などが出てくるため、それらをどう処理し、さらに資源としてどう活かしていくのか。そんな課題への新たな選択肢として、M150を導入することになりました。

取材時点ではまだ本格的な使用には至っていませんでしたが、無煙炭化器を新たな選択肢として、今後の活用を検討されていました。また、モキ製作所のハウス用薪ストーブにも関心を示され、「ハウス全体を暖めたい」という希望も伺いました。

農業の現場には、作物を育てるだけでなく、「どうすればより良い環境をつくれるか」という日々の工夫があります。今回の取材を通して、M150も、そんな現場の工夫の一つになっていくことを願っています。

農業、福祉、食をつなぎ、地域に循環をつくる

ずくや(ミールケア)

ずくやでは、すでに地域の資源を循環させる動きが始まっています。近隣の方からりんごの剪定枝を集め、受け取った無煙炭化器を使っています。作業を行うのは、ずくやのスタッフの皆さんです。

農業では、毎年の剪定によって多くの枝が生まれます。その枝を集め、炭に変え、できた炭を再び畑へ返していく。これまで処分していた剪定枝を、新しい資源として地域の農業に活かしていく。

ずくやでは、この一年間、試行錯誤を重ねながら、この取り組みを続けていくそうです。

ずくやの活動は、炭づくりだけではありません。花を育てて販売するほか、レストランも経営しています。そして、レストランから出る野菜くずは堆肥化し、資源として循環させています。

また、地域貢献活動として、東京駅八重洲口周辺のごみ拾いにも取り組んでいるそうです。今後は、人手が足りない農家の手伝いにも取り組んでいきたいというお話も伺いました。

農家の仕事を手伝うこと。剪定枝を集めること。炭をつくること。そして、その炭を畑へ返すこと。一つひとつの仕事がつながることで、新しい仕事と地域の循環が生まれていく。そんな可能性を感じました。

「処分する枝」が、冬の仕事になる

グリーンベイシス

玉ねぎ、ピーマン、トマトなどを育て、農福の委託やJAの産直への出荷にも取り組むグリーンベイシス。34人が在籍し、農作業では、りんごの枝を拾ったり、ぶどうの巻きつるを取ったり、薪を束ねたりしています。そうした仕事の中で出てくる端材を、実際にM150で炭化してみたそうです。

使ってみた感想は、「細かい薪は満足できる炭になった」。一方で、太い薪については、節の中まで十分に炭化させることができず、「もっと良い方法はないか」という新たな疑問も生まれました。これは、実際に現場で使ってみたからこそ出てきた声です。

また、無煙炭化器そのものが大きいため、置き場所も課題の一つ。そこで、「剪定枝を取っておいて、冬の仕事として炭化できないか」というアイデアも生まれています。

農業の仕事が少なくなる冬に、剪定枝を集め、炭をつくる。これまで「処分するもの」だった枝が、新しい仕事につながる可能性があります。

さらに、できた炭は袋に入れて保存しているとのこと。畑に撒くことで土づくりにも活用できることをお伝えすると、「実際に試してみたい」と話してくださいました。

もう一つ興味深かったのが「ソルガム」です。施設にはたくさんのソルガムが余っており、「これも炭にできたらいいな」と、新たな活用方法も考えていました。

さらに、信濃毎日新聞の記事を読んだ近所の方が、「炭を分けてもらえないか」と訪ねてきたというエピソードも。こたつに入れて使いたいのだそうです。無煙炭化器をきっかけに、地域の人との新しいつながりも生まれていました。

140年続く農家から、次の100年へ

いたやりんご

「いたやりんご」は、約140年前に創業した農家です。「いたや」という名前は、かつて板の屋根をつくる仕事をしていたことに由来します。昭和30年ごろからりんご栽培を始め、現在はりんごのほか、無農薬の野菜も育てています。

今回のクラウドファンディングについては、人づてに知ったことがきっかけでした。「無料でもらえるなら」と手を挙げたことから始まりましたが、その取り組みのコンセプトにも共感してくださったそうです。

実際にM150を使ってみて、まず感じたのは「着火が簡単」ということ。そして、持ち運びしやすいことも魅力だと伺いました。一方で、炭をつくるために消火をする際、思っていた以上の水を使うことや、高温になることで「NO焼き棒」が熱くなることなど、実際に使ってみて初めて分かることもありました。また、炭には脱臭の効果があることから、その点も気に入っているとのことです。

140年にわたって地域で農業を続けてきた「いたやりんご」。取材を通して、目の前の作物だけでなく、「この先も地域に何を残していくか」という視点を大切にされていることが伝わってきました。

そして、いたやりんごでは農業だけでなく、海外からの留学生や、生きづらさを感じている子どもたちを受け入れる活動もされています。「そういった悩みは、徐々に普通の生活の中で回復していけばいい」。そんな思いで人を受け入れているそうです。

今回お話を伺った際も、仲の良いご夫婦の姿がとても印象的でした。農業をする場所であると同時に、人が安心して過ごし、また次へ進んでいける場所でもある。そんな姿から、農業が人に与える力を感じました。

そば畑から生まれる新しい循環

安曇野みらい農園

安曇野みらい農園では、2020年から就労継続支援A型の農福連携に取り組んでいます。農作業だけではなく、座学やグループワークなども行い、年5回ほど、企業のスタッフを招いて研究や生産活動について話を聞く機会も設けています。

この農園で印象的だったのが、広がるそば畑です。担当者によると、長野県内で生産されるそばの約1割を手がけているとのこと。畑一帯がそばの花に覆われる光景は、取材の中でも特に印象に残りました。

そこで今、炭化させて試してみたいと考えているのが「そばがら」です。ただ、そばがらは燃えにくいのではないか、炭化器との相性が良くないのではないかという疑問もあります。それでも、「まずは試してみたい」という声が聞かれました。

そば以外にもトマトやりんごを育てており、りんごの剪定枝をM150で炭にして、畑に返すことも視野に入れています。

「育てる」だけではなく、「出てきたものを次の農業に返す」。そんな循環が、これから少しずつ形になっていくのだと感じました。

東御市の農業を、次の世代へ

グローデイズ

グローデイズでは、現在6カ所のぶどう畑を運営しています。ぶどうのほかにも、桃、梨、りんご、米、花など、さまざまな農業に取り組んでいます。農作業には、15〜20名ほどが携わっています。

ぶどうは、一つの房を育てるためにも長い時間が必要です。一つの枝に一房を残し、1年をかけて育てる。そして、苗から太い木に育つまでには5年ほどかかります。ぶどう栽培には、こうした長い時間の積み重ねがあります。

一方で、剪定をすれば枝が出ます。その枝をどう活用するかも、農業を続けていく上での課題です。担当者が気にされていたのは、ぶどうの剪定枝に含まれる水分。「水分が多いので、燃えにくいのではないか。乾かす時間もかなり必要なのではないか」と、実際に使う前から現場ならではの疑問が出ていました。

また、M150は大きいため、保管場所だけでなく、炭化作業を行うスペースを確保することも重要です。

現在、ぶどう畑を始めてまだ2年。担当者にとっては、新たなスタートを切ったばかりです。

そんな担当者には、以前から「いつか地元に帰って、東御市のために何か役立つことをしたい」という思いがありました。東御市には産業が少なく、一方で人手が足りない農家はたくさんある。地元で「何かできることをしたい」。そんな思いから農業に関わり、ぶどう畑を始めたというお話から、地域への思いが伝わってきました。

炭化器から始まる、小さな循環

今回、各事業所を訪ねて感じたのは、それぞれの現場で、M150を活用したこれからの形が見え始めているということでした。

剪定枝を冬の仕事にする。
余ったソルガムを炭にする。
りんごの枝を畑へ返す。
そばがらを炭化できるか試してみる。
ぶどうの剪定枝をどう活かすか考える。
そして、できた炭を地域の人が使う。

そこには、単なる「廃材処理」ではなく、人と仕事と農業がつながる循環があります。

もちろん、実際に使ってみれば、太い枝がうまく炭化できなかったり、水分の多い枝をどうするのか、置き場所をどうするのかといった課題も出てきます。しかし、そうした「やってみたから分かったこと」こそが、次の工夫につながっていきます。

モキ製作所は、製品をお渡しして終わりではなく、現場の皆さんからいただいた声を大切にしながら、これからも活用方法を考えていきたいと思っています。そして今回のクラウドファンディングを通して生まれたご縁が、それぞれの地域で新しい循環につながっていくことを願っています。

ご支援くださった皆さま、そしてM150を受け取ってくださった皆さまに、心より感謝申し上げます。「捨てるもの」を「未来に残すもの」へ。無煙炭化器M150が、そんな循環のきっかけになれば幸いです。

(記事執筆:総務部 滝澤)

取材協力:
株式会社安曇野みらい農園
いたやりんご農園
就労継続支援B型事業所カンタービレ
一般社団法人クロスオーバー
就労継続支援B型事業所 グローデイズ
就労継続支援B型事業所 自立訓練(生活訓練)事業所 green BASIS
就労支援施設 信州ふれあいの森
株式会社ずくや

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